もう5年ぶりになるだろうか。あの人から急な連絡。
「久しぶり。急で悪いけど、今夜フットサルあるから、2時に駒沢体育館でよろしくーっす。」
「えっ、夜中の2時?って、どうやって・・・。」と聞き返す前に電話は切れた・・・。
仕方ない行くか。
○深夜の駒沢体育館
深夜01:43 駒沢公園到着
わけも分からず体育館の方へ歩いていくと、誰もいないはずの体育館の窓から明りが漏れている。
扉を開けると・・・ワー!会場が満員!?
「深夜だぜ。なんでこんなに人いんの?」と面食らっていると、後ろから不意にあの人が
「やー、着いてすぐに悪いんだけど、1試合目になっちゃってあと10分で始まるから準備して。」
とだけ言って、どっかに消えていった。
○驚きの相手
会場の端でパンツ丸出しで着替え、ストレッチと軽いアップ済ませたら、中央に集合。
相手チームは?
もしや、この金髪の悪そうな外人はサッカー元ウルグアイ代表で交通事故で片足を失くしたダリオ・シウバ!?
となりは、(悪いけど)並の関東リーガの寺島蹴斗かな?先月の『フットサルマガジン アラ』で対談みたぞ。
あとは、細いやつとか、ドレッドのやつとか、身体能力高そうな女子と・・・ゴレイロ熊のようにでかいなー。
なんか大物チームにびびるが顔には出さず平静を装い、余裕の笑みで握手する。
相手が誰だろうと受けてたつ。いつでも心は世界基準。
運命に翻弄されつつ、キックオフの笛が鳴り前半が始まった。
○義足のピヴォ ダリオ
こちらのキックオフからスタート。後ろに戻したボールを後方で2、3度廻してボックスから縦、落としてミドルシュー
は、大きく枠をはずれる。オーソドックスな、極めて平凡な形から入った。
そのまま大きな展開もなく気づけば、ベッキの位置に定着した。相手のピヴォはダリオだ。
どうも本物らしく左足が義足の為、1、2歩は動くが基本的に中央に陣取るクラシックなピヴォのスタイル。
「当ててきたらカットしてやろう」と想ってた矢先、手前に当てられダリオが軽くワンステップし右足裏でキープされる。
身体を密着させ、目先に見えるボールは懐が深く足を伸ばして奪えない距離。
「左足は義足だから反転シュートはない!」と考えるが早いか、ダリオがややボールを右にずらすと同時に高速反転し
遠心力を利用して義足の左足を振り強烈シュー!は、ゴレイロがなんとか飛びつき外へ流す!!
なるほど、反転シュートは遠心力を利用しミートすれば、リキんで蹴らずとも強いシュートが打てる。
一瞬義足が鞭のように延びたようにも見えた。油断しては危険だ。
○聾者(ろうしゃ)のトビアス ヒロ
結局、ダリオの落としから関東リーガ寺島の技ありゴールを決められ先制点を奪われる。
さっきから何か違和感を感じる。寺島とコンビが冴える細いやつ、あいつはヒロというらしいが何かがおかしい。
そして気づく!キックインで寺島がアイコンタクトと同時に手を小さく振る。あれは手話だ。ヒロは耳が聞こえないのか?
ヒロは、さっきからノールックで逆サイドに何度も正確なパスを配球している。
しかし、「その何度も」は普通では考えられないほどの鮮やかさで100%の精度を誇っている。
その理由はなんと、寺島の目線とアイコンタクトで連携を取っている。そして・・・
敵の目線・・・というより俺の目線で味方やボールの位置を読まれてる・・・。
「いまさらコイツと目線でフェイント合戦もどうだか」ということで、思いっきり受けて立つことに決めた!
目線読まれまくっても、サルで勝つ!
○決着のとき
俺も吹っ切れたらチームも吹っ切れ、前半終了間際に同点に追いついた。
後半も、向こうはダイアモンドの形からエイトで廻し、ダリオのピヴォ当てを中心としたクラシックなパターンを貫く。
こっちも、プレッシングは多用せず、1対1の場面を多く作り個人技を楽しむような攻撃的なフットサルで応戦。
お互い2点ずつ追加して3-3のまま勝負は後半残り2分43秒へもつれ込む。
改心のサンドから足裏でボールを抜き取りカウンター!
「こいつを抜けばビックチャンス!」躊躇せず目の前の敵に1対1を仕掛けドリブルで抜き去る。
完全どフリーから、トーキックでシュー!
は、ゴレイロ、がっちりキャッチ!?ガーーーン!
って、頭を抱えてる暇は無い。幸い熊のようなゴレイロは近くの味方へ転がす。その間に全力疾走で自陣に戻る。
寺島パス→ヒロが中央にドリブルするとヒールでスイッチ→再度、寺島。スイッチでマンツーマンマークが外された一瞬のスキを
寺島が対角線上に鋭いシュート性のボールを蹴り込む!反応するダリオが右足でワンステップ踏み左義足の方からスライ!!
(俺の心のつぶやき)「届くなー」
カシュッ!?
義足がマジ○ガーZさながらに飛び出す、ロケットキックゥーーー!???
パスッ!ゴーーール!!!
掃除機のコードの要領で戻る足・・・(反転シューのシーンを思い出し)やっぱり延びてんじゃん・・・。
歓喜に包まれる会場と同時にピッピッピーと終了のホイッスル。3-4、負けたよ。
○戦いのあと
審判の指示で並び挨拶。ありがとうございましたー。
一通り敵味方握手して水分補給。
あの人「いやー、久しぶりですねー。だいぶフットサルうまくなりましたね。この後の試合も面白いんで見ていきましょう。」
俺「なんなんですか?これは?」
あの人「秘密を守れる人だけ集まる、ソーシャル・フットサル、ナイトジョガ・コマザワで今のはビギナーエキシビジョンです。あっ、次の選手が出てきましたよ。」
カナリア色のユニが入場。って、ファルカオ、トビマス、ホビーニョ、オスカル・・・ブラジル代表!?
相手は、ラモン、きーちゃん、キング・・・あの人達もサッカーやめてフットサルしてんのか。
旧東京オリンピック会場、駒沢体育館に深夜0時過ぎに明りがついていたら、そこは夢と情熱の扉です。
○あとがき
ダイさん、カズさん、おーのさんと飲みに行ったときに約束してたんで勢いで書いてみました(笑)。
バーッとアイディア出して、一気に書いてみたけど面白いかな?誤字とかあれば、こっそり直しておきます。
内容で意識したのは、サル初心者向け。
ゲームの入り方とか、キックイン、数種のシュート、駆け引きの楽しみ方、若干のサル用語を入れつつ、
老若男女でも楽しめるということ、そんなのを適当に入れてみました。
残念ながら、キックオフは前に出す、ゴールクリアランス、4秒ルール、スライでのシュートブロックとかは
入れられませんでした。
書き方で意識したのは、設定の詳細を書き過ぎない。
例えば、寺島蹴斗は親の期待でサッカーっぽい名前を付けられて、もの心付く前から小中高までサッカーをし
プロを目指すんだけど夢叶わず、フットサルに転向。関東リーガなのでそれなりに実力はあるが、日本代表とか
プロではない人。そういう人が意外と裏のフットサルで活躍してるといいんじゃない?実はそんな感じ。
他は、適当にあなたの周りの人に当てはめたり、想像してもらえると幸いっす。
では、老若男女いつまでもフットサルを楽しみましょう。